2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。
キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、彼女たちの魅力に迫って行く。
全七回の第二回に登場するのは、メンバーの誰もが頼るしっかり者であり、大学で哲学を専攻する知性派でもある永野愛理だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。
──『Wake Up,Girls!』を目指す前の永野さんはどんな女の子でしたか?
永野愛理 私はオーディションの時にも山本監督に、3回ぐらい暗いって言われたんです。自分としては暗いというより、あんまり騒いだりするタイプじゃないって感じなんですけど。私大学でも哲学を勉強していて、内に籠もる方っていうか、あんまり笑うことも得意じゃなかったりするんです。少なくとも明るい子ではなかったです。
──哲学を勉強しようと思ったきっかけはなんだったんですか?
永野 高校の時に、学校の図書館でキルケゴールの『死に至る病』という本を見つけたんです。タイトルを見て単純に面白そうって思って、それをきっかけに哲学って学問を知って、それになんだか運命を感じました。ちょうど受けたい大学に哲学科があったので、それで勉強することにした感じです。
──大人しめで、哲学を学ぶ女の子がアイドル作品の声優オーディションを受けるのは結構な事件なのでは?
永野 そうですね! ずっとアニメが好きで、高校の頃から深夜アニメを見ていたんです。仙台は深夜アニメは少ないんですが、その時ちょうどやっていたのが『涼宮ハルヒの憂鬱』で。そこからアニメにのめり込んで、放送していないものはTSUTAYAで借りたりして見るようになりました。そんな時にニコニコ動画で『Wake Up,Girls!』のオーディション募集を見かけたんです。自分なんかが受かるわけ無いと思ったんですが、大好きなアニメに一回でも出演するチャンスがあるなら応募してみようかな、と思って。
──その時は山本監督が『涼宮ハルヒの憂鬱』のスタッフだとは意識してたんですか?
永野 全然気づきませんでした。オーディションの時に監督の経歴の中にハルヒや『らき☆すた』の名前が並んでいて、あ、山本監督ってハルヒのシリーズ演出の人だったんだってその時初めて知りました。ますますすごいなって思いました。
──オーディションで印象に残っていることはありますか?
永野 書類審査を通って、二次審査は仙台であったんですが、アカペラで歌う時に一回歌詞を忘れてしまったりして、そこで落ちたな…と思いました。でもなんとか三次に進むことができて、東京の三次審査で山本監督に「暗い」って言われました(笑)。やっぱり落ちたな…と思いました。実は最終審査は吉岡茉祐ちゃんと、田中美海ちゃんと私が3人で連番だったんです。3人で一緒にお昼を食べたりして、3人で仲良くなりました。
──最終試験は確かキャラごとだったと思うんですが、真夢役を受けていたんですか?
永野 そうなんです。吉岡茉祐ちゃんが本当に真夢ちゃんにぴったりだったので、全然自信がありませんでした。全然自分をアピールできなかったし、監督には暗いって言われるし…。選考の番号が張り出されて、あ、自分の番号がない、落ちた…と思ったら、林田藍里ちゃんに番号があってびっくりしました。
──合格が決まってどうでしたか?
永野 まさかこんなにうまくオーディションに受かるなんて思わなかったので、最初はドッキリだと思いました。藍里ちゃん役が決定した時は、特に合格の知らせだとは言われずにエイベックスに呼ばれて、なんだろう…とお母さんと行ったんです。関係者の方が何人か座っていて、さらっと「ま合格なんですけど…」って言われて、ええ!? って。飲み込めない内に話が進んでいって、あ、受かったんだ、ね? みたいな感じで、実感するタイミングはありませんでした(笑)。
──監督は、永野さんは最初は苦手だった演技がすごく伸びたと話していました。
永野 最初は山本監督にも、音響監督の菊田さんにもご迷惑をおかけしました。アフレコで先輩方がいる中たくさんリテイクを出して、申し訳ないという気持ちが大きかったです。菊田さんがすごく親身になってアドバイスをくれたので、絶対これに応えないといけないと思いました。自分でもみんなの脚を引っ張っている自覚があったので、最終回までにはなんとか乗り越えないといけないと思って頑張っていました。
──最初の頃と最終話で、演技や心境の変化はありましたか?
永野 最初に見た時は他の子みたいに特徴がすごくあるわけじゃなくて、ちょっと暗いのかなって思ったんです。おどおどしてるのをどう演じたらいいのかなと思ってたんですが、話が進む内に、暗くなんかなくて、本当にごく普通の明るい女子高生なんだなって思うようになりました。後半は藍里ちゃんが明るい一面を出してくれて、みんなの中に入っていったので、回を増すごとに自分自身の演技も明るくなったと思います。それで感情を乗せられるようになったので、前の自分よりは成長できたんじゃないかと思います。
──藍里にとっては早坂プロデューサーとの関わりが大きいと思いますが、永野さんから見た早坂プロデューサーってどうですか?
永野 私早坂さんが一番好きかもしれません(笑)。あんなにきつくあたってるけど、藍里のことをちゃんと見ているからこそWUGのネックだと思っているし、心の何処かでは応援してくれているんじゃないかと思うんです。そういうところが好きなんです。やはり早坂さんは藍里を一段上に連れて行ってくれた人なので思い入れがあります。WUGメンバーはみんな早坂さんや白木さんが好きですね。
──監督は永野さんは本当に努力していると話していましたが、そういう努力は苦にならないタイプですか?
永野 私スロースターターで、中学時代にやっていたバトミントンの部活とかでも、最初はレギュラーになれなかったのが、3年生になったら一番手になって区で優勝したりしてたんです。私ダンスも最初は本当に下手で、一番下のクラスだったので…やっぱり、ずっと自分のペースで頑張ってるタイプではあるかもしれません。
──監督は『Wake Up,Girls!』を通じて仙台を盛り上げていきたいという思いがあるようです。
永野 震災があって、たくさんの方が東北を盛り上げようとしてくれています。私は仙台に住んでいて、せっかくこういう作品に関わるチャンスを頂いたので、私もなんとか仙台を盛り上げたいと思っています。今仙台では至るところで『Wake Up,Girls!』を見るので、これからももっと仙台で作品が広まって、私も何かができたらと思います。
──永野さん的に仙台のおすすめスポットってありますか?
永野 結構言い尽くしていて、皆さんのほうが詳しいんじゃないかと思います(笑)。あ、アニメの中で実波が阿部蒲鉾さんでひょうたん揚げを食べてたじゃないですか。あのお店がつい最近リニューアルしたんです。最近2ヶ月ぐらいそのために休業していたので、仙台に来ても食べられなかったワグナーさんもいたと思うので、もう一度行ってみてください。
──仙台の女子高生の休日の定番とかってありますか。
永野 仙台駅のペデストリアンデッキ界隈にパルコとかロフトとかエスパルとかが集まっているので、みんなそこに行きますね。晴れている日は、ペデストリアンデッキに出ている椅子にみんな集まって話していたりします。
──夏のツアーでは仙台でライブがあります。仙台でのライブやイベントについての思いを教えて下さい。
永野 仙台の握手会に行ってワグナーさんたちにお会いすると、もっと仙台でイベントやってほしいって声が多いんです。私自身仙台に住んでいるので、もっと仙台でイベントやライブをやりたいなって気持ちは強いです。だから夏のツアーはようやくだなって感じです! 他の土地からツアーをきっかけに来てくれる人もいると思うので、これを機会に仙台を見て回って、仙台を好きになってほしいです。だから9月のライブに限らずもっとやりたいです。光のページェントのイベントにもいつか出られないかなと思ってます。
──友達が見に来たりとかあるんでしょうか?
永野 この前友達から、ツアーのチケットが取れたって連絡が来ました。小学校の頃からダンスで一緒のグループで踊ってた子なので、すごく嬉しいです。ずーっと応援してくれて、アニメとか全然知らないのに『Wake Up,Girls』のグッズ集めてくれてたりするんです(笑)。
──今まで監督に言われた言葉で印象に残っていることはありますか?
永野 私が最初全然演技ができていなかった頃、「お前が一番心配だ」って言われて、早坂さんじゃないですけど「WUGの心配要素は愛理だ」って。どうしたらいいんだろうってすごく悩みました。それだけじゃなくていろんな作品を見て研究してごらんとかアドバイスもくださって、7話あたりで藍里がWake Upしたところで、監督が「最初は心配要素だったけど、それが無くなって安心して見ていられる」って言われて、肩の荷が下りて、よかったなと思いました。すごく嬉しくて、次のアフレコから気持ちが全然違いました。
──センター曲の「16歳のアガペー」について教えて下さい。
永野 藍里ちゃんアニメでもダンスがすごく下手でよっぴーに怒られたりしてたので、まさかセンターとかできると思っていなくて。初めて聞いた時は「林田藍里ちゃんおめでとう!」って感じでした。いざレコーディングになるとソロの落ちサビがすごく難しくて、「お花畑でスキップしてる感じで歌って」って言われて、本当に難しかったです! それでできあがったのがあのCDで、林田藍里ちゃんらしくなったと思うので、もっとみんなに聴いてもらえたらなと思います。
──永野さんはあまり前へ前へというタイプではないように見えますが、楽曲の「センター」に興味や意欲はありますか?
永野 せっかく7人いるので、たまには茉祐ちゃんにもお休みしてもらって(笑)。やっぱり真ん中だと見えている世界が違うと思うし、プレッシャーもあると思うので、そういう感覚も味わってみたいです。でも『Wake Up,Girls!』は曲の間にも結構ポジションの入れ替わりがあって、見せ場はちゃんとあるんですよね。
──曲中のポジション移動はすごく大変そうです。
永野 私もあんなに動くのは初めてで、移動が激しいですね。ここは美海が歌うからもっとこっちに行かなきゃ、みたいな。他の子を隠しちゃいけないし、歌ってる子の邪魔しちゃいけないし。よく見ている人なら、すごく無理な移動をしているのがわかると思います(笑)。毎回ヒヤヒヤですが、最初に比べたらスムーズになりました。
──最近のイベントや活動で印象に残ったことってありますか?
永野 『Wake Up,Girls』は握手会でファンの方と直接お話する機会が多いので、アニメの感想とかダイレクトに聞けたりするんです。最近すごいと思ったのは、(藍里のイメージアニマルの)サメのかぶりものをつけてきてくれた人がいて、手作りらしいんです。ワグナーさんの優しさや愛情は毎回イベントで実感します!
──シャーク林田って話題になってるみたいですね。
永野 そうなんですよ。最初握手会で言われて、ネットで調べたらシャーク林田っていっぱい書いてあって、なんでって思いました(笑)。最近はサメのパペットをつけてくる人とかもいます。
──藍里の魅力や見どころを、教えて下さい。
永野 藍里ちゃんって意外とメンバーのお母さん的存在じゃないですか。最終回でもよっぴーの脚を最後まで冷やしてあげていて、優しいなって思うんですけど…。実は、なんか台詞の中に引っかかることがちょいちょいあって、実は藍里ってちょっと腹黒いんじゃないかと思うことがあるんです(笑)。私も演じていて裏があるんじゃないかと思うので、そういう部分も見てもらえたらと思います(笑)。
──今後のWUGでやってみたい活動はありますか?
永野 MVの撮影以来七人で仙台に行けてないので、仙台のあちこちを私たちが周ってレポートしたりしたいです。そういう映像を見たら皆さんもっと行ってみたいと思ってくれそうなので。実際に食べに行ってリアルうんめぇにゃ~みたいな。
──この夏はどんな夏にしたいですか?
永野 去年の夏もコミケに行ったり燃えた夏だったんですが、今年は自分自身ももっと熱くなって、メンバーも、ライブに来てくれるお客さんもひとつになって、人生で一番楽しかったと思う夏にしたいです。アニサマもすごいステージなので、他のアーティストさんにも負けない気持ちで! たぶん私の人生で一番頑張らないといけない夏だと思うので、頑張ります!