Wake Up,Girls!

山本寛監督 vs「Wake Up, Girls!」 特別インタビュー企画

02 林田藍里役「永野愛理」編

2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。

キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、彼女たちの魅力に迫って行く。

全七回の第二回に登場するのは、メンバーの誰もが頼るしっかり者であり、大学で哲学を専攻する知性派でもある永野愛理だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。

山本寛監督に聞く『Wake Up, Girls!』「永野愛理」編 七瀬佳乃役「永野愛理」個別インタビュー

山本寛監督から見た 『Wake Up, Girls!』

──『Wake Up, Girls!』の舞台に東北仙台を選んだ理由を改めて教えて下さい。

山本 最初に東北被災三県三部作にしようと思ったんです。岩手、宮城、福島にそれぞれ作品を作りたかった。震災が起こってから三県を周って、取材もしましたし、ボランティア活動をしたりいろんな人に話を聞いたりしました。何かをしなければという思いがあったので、3本の企画をたてました。ひとつめが岩手の大槻町を舞台にした短編の『blossom』。これは金山文造さんという実在の方をモデルにしていて、その方に献呈するつもりで作った短編です。それからアニメディアさんで連載してた、福島県の南相馬市を想定して舞台設定した『真夜中のスーパームーン』という作品。そして宮城県の仙台を舞台にした『Wake Up, Girls!』の3本なんです。

──その3本の中で仙台を舞台にした『Wake Up, Girls!』の中で、監督が描きたいと思っていたテーマは描き切れましたか?

山本 やれることはやったと思います。もちろん、描き足りないことはたくさんあります。自分の中ではイベント性を大事にしたかったんです。東北がテーマなんですが、この作品は社会的なテーマ性よりも、お金にならないと意味がない。東北の人たちに夢と希望をという意味はもちろんあるんですが、僕の中ではその位置は『blossom』で、うちは一銭ももらわないし、商売抜きで東北の人たちに少しでも希望を持ってほしいと思って作りました。『Wake Up, Girls!』はそれとは対称的な位置づけで、お金の面でも東北に貢献したかったんです。孫正義さんが100億円寄付したとか、AKB48が1億円寄付したとかの話もありますが、僕にできるのはせいぜい数万円とかです。寄付では力になれない。ではどういう形で貢献できるかと思えば、現地にお金が落ちるイベント性を作品に盛り込むことだと思ったんです。

──聖地巡礼の対象にするということですか?

山本 聖地巡礼という意味合いは当然あります。実は福島の被災者の方から、風評被害がすごくてどうしたらいいかわからない、福島を舞台にしたアニメを作ってくれませんか? というリプライをTwitterで頂いたんです。それでああ、その手があったかと。聖地巡礼ができる形で作品を作って、できれば何かもう少しイベント性を盛り込めないかと考えた時、それはライブだろうと思ったんです。ライブなら頻繁にやっても問題ないでしょう? そこでアイドルアニメをやろうと思って、生まれたのが『Wake Up, Girls!』なんです。

──夏のツアーに仙台を含めたのはその一環なんですね。

山本 当然です。本当はもっとたくさんやらなくちゃいけないし、やりたいんですが、いかんせん僕らの実際の本拠地が東京なのでなかなか行きにくいんですよね。でもこれは長いスパンで考えていきたいと思っています。仙台を拠点としたアイドルグループだと言ってるんですから、それは嘘偽りなくやらなくてはいけない。

──聖地であり、ライブを行なうことで、大洗や鷲宮のように地元にメリットを還元するのが目的のひとつなわけですね。

山本 そうなりたいですね。『らき☆すた』や『ガールズ&パンツァー』と違うのは、仙台は大都市圏なんですよ。だから鷲宮的なオラが町的な盛り上がりとは規模感が違うんですね。仙台という大都市にもっと大きなイベントを仕掛けていくことで、復興につなげていきたい。そのためにはビジネスとしてきちんと数字を出さないといけないんです。

──ビジネス的な意味では、『Wake Up, Girls!』はI-1 clubになっていかないといけない?

山本 そうですね。仙台のI-1です。そう考えてやっていきたいと思っています。

──第六回AKB48総選挙の中間発表では、W松井、山本彩、そして指原莉乃といった地方組が上位を大きく占める情勢です。アイドル界全体でも九州のLinQのようなロコドルが注目されていますが、『Wake Up, Girls!』立ち上げ時点でこうした流れは予見していましたか?

山本 作品の構成をしている段階で前田敦子の卒業が決まっていたので、AKB48の本店が絶対的な頂点の時代は終わるというか、頭打ちにはなるだろうなと思っていました。しかし地方に勢いがあるというよりは、AKB48という絶対的な物語がピークを越えたほうが大きいと思います。6年かかって頂点を極めたら、あとはゆるやかに下がっていく。それはモー娘。もそうだった。ももクロにしても、紅白だ、東京ドームだと目標を決めたじゃないですか。それを達成してしまったら…。

──物語が消えてしまうんですね。

山本 そう、アイドルは物語なんですよ。物語が消えるとそうなっちゃうので、ももクロちゃんも今心配なんです。これはもう、しょうがないことなんです。だからWUGに関しては、いつかちゃんと解散させようと思っています。しかるべき時が来たら解散させることは関係各社にも最初から言ってあって、ダラダラと惰性で続けるのでは意味が無いと。

──アイドルは青春の一時期の輝きという感じなんでしょうか?

山本 それは違って、思春期的なものとは別ですね。評論家の中森明夫さんが『あまちゃん』に関する言説の中で、アイドルとは誰かを元気にする存在だと語ってるんです。『あまちゃん』は天野アキがアイドルになる物語なんですが、その母親の春子もアイドル志望者だったし、その上の夏ばっぱもアイドル的存在だったという、三世代の物語なんです。だから年齢とかは関係なく、誰かを元気にすることができれば、アイドルなんです。

山本寛監督から見た『永野愛理』
ページトップに戻る