2014年1月に劇場アニメを上映、1月~3月にTVアニメが放送された『Wake Up, Girls!』。
その一番大きな特徴は、一般公募でキャラクターと同世代の未経験の新人を発掘し、歌、演技、ダンスなどを指導する手法だ。キャラクターの下の名前は声優から取っており(七瀬“佳乃”役の青山“吉能”)、アイドルになっていく中高生と、同じく新人声優として成長していく少女たちを重ねる作品と言ってもいい。
夏には「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演や初のツアーライブを控え、さらなる飛躍を期待される彼女たちは、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、彼女たちの魅力に迫っていきたい。
全七回の第一回に登場するのは、「Wake Up, Girls!」を引っ張るちょっと頼りない最年少リーダー、青山吉能だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。
──『Wake Up,Girls!』を目指す前の青山さんはどんな女の子でしたか?
青山吉能 実はWUGを目指す前のことってあまり思い出せないんですよね…。でも小さい頃からずっと声優になりたかったので、福岡で二次審査があるオーディションはどんどん受けていました。私たちが受けた『Wake Up,Girls!』オーディションはアニソン・ヴォーカルオーディションの第2回だったんですが、第1回のi☆Risさんを選ぶオーディションも受けていました。高木美佑もその時受けてましたね。
──性格面ではどんな子でした?
青山 変な子でした! 学校でもくだらないことを極めようとしていてですね、いかに放課後をくだらなく過ごすかを友達と競ったりしました。『テニスの王子様』に「俺様の美技に酔いな」という台詞があるんですが、それをだるまさんがころんだ風に「俺様の美技に酔~いな」と言ったらポーズをキメる遊びとかしてましたね。あとは「木に語りかける私」とかそういうテーマで写真を撮ってもらったり。学校がトランプ持ち込み禁止だったので、バスカードを使ってトランプや将棋を作ったりもしていました。ルール知らないんで作って満足するんですけど。本当にくだらない、実に楽しい毎日を過ごしていました。
──部活はやっていました?
青山 小中ずっとコーラス部に所属していました。強豪校だったのでお休みはお正月ぐらいしかないぐらいで、朝練昼練夕練みたいな。筋トレとかもすごくやってましたし、上下関係や信頼関係がすごかったですね。今でも東京にいるOBの先輩と連絡を取り合っていたりします。体力や喉はもちろん、歌に情感を込めるために朗読とかもやったので、色々と今でも役立っていると思います。
──『Wake Up, Girls!』のオーディションで印象に残っていることはありますか?
青山 実は二次審査の日、遅刻をしてしまったんです。普通遅刻ってありえないし、即不合格だと思っていたんですが、最終ブロックに入れて頂けたんです。受けられるだけでもありがたいと思っていたので、合格して本当に嬉しかったです。だから最終審査の日は前日に会場を下見して、絶対に迷ったりしないようにしてちゃんと参加できました。良かったです。
──大荷物をガラガラっと引きながら現れて、最終オーディションの途中でまたガラガラっと去っていった姿は他のメンバーも印象に残っていたようです。
青山 そうなんですよ! 私熊本に住んでいて最後まで受けられなかったので、オーディションの予定を繰り上げてもらったり。私二次審査では遅刻するし、こんな迷惑ばっかりかけたら落ちたな…と思ってました。
──最終審査で、監督に「この中で2人以外は落ちるが、落ちたらどうする?」と聞かれた時のことは覚えていますか?
青山 覚えてます! 実は私落ちる落ちるって言ってますけど、オーディションの本番中は誰よりもポジティブシンキングなんです。いつもこの中では私が一番上手いなって思っていて、今でも私が一番上手かったと思うんですけど~。最低ですね(笑)。その時も自分は必ず受かると思ってるので、監督に言われた時も話半分でした。落ちた時のことを考えてないんです。
──周りには泣いてる子もいるような空気ですよね?
青山 私5列目にいたんですけど、同じ列の子は全員泣いてるんですよ。私だけ泣いてないのでちょっとやばいと思いましたが泣けませんでしたね。落ちるかどうかより、隣の子の身の上話を聞いてちょっとうるっと来てましたけど。でもオーディションが終わったら「落ちたな…」と思ってました。自分の中で何か、スイッチがあるんです。
──山本監督は、青山さんは思っていることがすぐ顔に出ると話していました。
青山 そうなんです。嬉しい悲しいムカつくイライラするは全部顔に出ちゃいますね。実はそれで悩んでいて、大人の世界でやっていくためにポーカーフェースを目指してるんですけど…駄目ですね。頑張りが5分しか続かないんです。電車の中でゲームの音声を聞いてるとニヤニヤしちゃうし、友達の相談を聞いてるともらい泣きしちゃうし。これすごく疲れるんですけど、自分でもどうにもならないんです(笑)。
──青山さんって、普通に声優オタクですよね。
青山 そうなんですよ! この世界に入って、さらにそれが増したというか。昔は特定の誰かをすごく応援したりはなかったんですが、ワグナーさんが他の女性声優さんたちを推してる姿を見て「推す」ということを知ったので、それからファンの人は声優さんのどういうところが好きなんだろう、と考えるようになると、こんな素敵な人たちだったんだ! と今ヒートアップしてます。
──好きだったアニメにはどんなものが?
青山 『SAMURAI DEEPER KYO』ってご存じですか? あのアニメがドハマりしたきっかけで、今でも思い出すと涙が出るぐらい好きです。オタク文化的なものの存在を知ったのは、西尾維新先生の小説『戯言シリーズ』がきっかけでした。そこから『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』、それから『セキレイ』にハマり…みたいな感じです。大体友達の勧めですね。
──山本寛監督や神前暁さんの関わった作品が多いですね
青山 ですね! 『化物語』も大好きで、声優を目指したきっかけも『化物語』でした。私の周りで声真似が流行っていて、千石撫子とか戦場ヶ原ひたぎとかの真似を色々やってたのが声の演技に興味を持ったきっかけでした。
──『Wake Up,Girls!』では佳乃も青山さんもリーダーを務めています。自分ではどんなタイプのリーダーだと思いますか?
青山 ずっと合唱部をやっていたので、団体行動の難しさ、人をまとめる難しさはわかっていたつもりです。でもだからこそ、団体、チームがひとつになった時の力って一人では絶対に出せないと思ってるんです。だからWUGもチームとしてひとつになればもっともっとすごい力になれるのに…とはずっと思ってます。WUGはまだまとまりが足りないな…と思っていて、実はそういうことをずっと考えてるんですよ! でもなかなか実行に移せないので、やっぱりへっぽこだなと思います。
──山本監督は、悪い方向に転がった時の青山さんのメンタルの弱さを心配していました。
青山 ジャスト!(それだ、と青指立て) 本当に超ネガティブになります。何回やってもできないってなると、マイク投げ飛ばしたい、台本びりびりしたい、もうみんな嫌だって思います。たぶん短気なんだって思います。
──初めてのアフレコとか、できないことだらけですよね?
青山 『WUG』の本番のアフレコとは別に、アフレコレッスンあったんですけど、その時私過呼吸になっちゃったんです。WUGとしてどうしたらいいんだろう、リーダーとしてどうしたらいいんだろうって悩んでいた時期で、演技で何をやってもだめで、呼吸が浅くなってとまらなくなっちゃいました。たくさんの人に迷惑をかけてしまって、これじゃ駄目だなぁ…と思いました。
──追い詰められたアフレコといえば、7話で感情を爆発させる佳乃の演技は大変だったそうですね。
青山 その頃、監督の言っていることがわからなかったんです…。自分では感情をすごく込めているつもりだったのに、監督からはどこかのアニメの演技の真似だって言われて。愛理と一緒に居残りになって、本当はみんな帰れるのに待たせてしまって、わかんない、もう駄目だ、もう駄目だ…ってなった時に読んだ台詞が、「めっちゃいいね」って監督に言われたんです。だから技術でどうこうじゃない感じです。人によっては下手だと思われるかもしれないんですが…。私にとっては、何かキラキラした宝物を見つけたようなアフレコでした。7話の経験があったからこそ、12話の演技とかができたんだと思います。
──作品を通じて、キャラクターとしての佳乃はどう変わったと思いますか?
青山 劇場の頃はクールでまとめていく完璧な子だったのが、だんだん私の表情に気持ちが出やすいところが入ったり、泣いたり、喜んだり、感情が出る人間らしい子になったと思います。12話の「どうしようどうしよう!」ってなっている姿とかは私そのもので、七瀬佳乃と青山吉能がどんどん重なって、すごい、こんな作品ってあるんだ! と思いました。
──佳乃の魅力ってどんなところでしょう?
青山 皆さん好みは色いろあると思いますが、一番かわいいキャラクターとは青髪ロングなんです! 何事にも! ビジュアルが一番かわいくて私好みで、内面も守ってあげたいと思うんです。そういうところが魅力的だなと思います。超かわいいっす、やばいっす!
──監督に言われて印象に残ったことや、この野郎! って思ったことはありますか?
青山 7話に限らず、ずっと言われていた「口先だけで演技してる」ということですね。毎回ストーリーを説明して頂くたびに言われるんです。そのたびに「やってないし…」と内心思ってたんですけど、7話のアフレコや色々な経験をして、今ではああ、最初の頃は別の作品で見たあの演技を意識したりしていたかもしれないってわかるので、監督の言葉をちょっと不満に思ってたりした自分が恥ずかしいです。
──きっと監督には、その不満も伝わっていたんでしょうね(笑)。
青山 そうなんです! 絶対顔に出てる! 態度の悪い子供だったと思います。だからすっごく恥ずかしいし、謝りたい気持ちでいっぱいなんです。
──最後に、アニサマやツアーが控えるこの夏を、どんな夏にしたいですか?
青山 夏を制するものは受験を制するって言うじゃないですか。実は私も受験生なんですけど…今は「Wake Up,Girls!」として夏を制したい気持ちの方が大きいです。今はWUGでいられることがすごく大きくて、アニサマに出演できるチャンスなんて、そうはないと思うんです。だから18年間生きて来た中で一番の、最高の夏にしたいと思います!