Wake Up,Girls!

山本寛監督 vs「Wake Up, Girls!」 特別インタビュー企画

01 七瀬佳乃役 「青山吉能」編

2014年1月に劇場アニメを上映、1月~3月にTVアニメが放送された『Wake Up, Girls!』。
その一番大きな特徴は、一般公募でキャラクターと同世代の未経験の新人を発掘し、歌、演技、ダンスなどを指導する手法だ。キャラクターの下の名前は声優から取っており(七瀬“佳乃”役の青山“吉能”)、アイドルになっていく中高生と、同じく新人声優として成長していく少女たちを重ねる作品と言ってもいい。

夏には「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演や初のツアーライブを控え、さらなる飛躍を期待される彼女たちは、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、彼女たちの魅力に迫っていきたい。

全七回の第一回に登場するのは、「Wake Up, Girls!」を引っ張るちょっと頼りない最年少リーダー、青山吉能だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。

山本寛監督に聞く『Wake Up, Girls!』「青山吉能」編 七瀬佳乃役「青山吉能」個別インタビュー

山本寛監督に聞く 『Wake Up, Girls!』「青山吉能」編

──さて、枕として『WUG』全体の話を伺いましたが、ここからメンバーそれぞれを掘り下げていきたいと思います。山本監督から見た「青山吉能」はどんな女の子ですか?

山本 一番かわいい子ですね。かわいいというのは、かわいげがある、という意味で。お馬鹿だし、腹に溜めてるものもきっとあるとは思います(笑)。そんな、100%無邪気にやってるとは思ってないです。でもその腹に溜めてるものも含めて、子供っぽくてかわいいんです。明らかに「あ、今私傷ついてるよ」というのが顔に出るんですね。

──素直に表に出るタイプ?

山本 出ますね! なんやかや出ます。別に彼女がそうだからリーダーにしたわけではないんですけどね。作品の構成上七瀬佳乃がリーダーだから彼女をリーダーにせざるをえなかったんですが、結果としてそれは功を奏していると思います。WUGのチーム編成を考えると、(吉岡)茉祐や(奥野)香耶がリーダーという可能性もあったと思うんです。でも一番頼りない、一番わけがわからないことを言う子供の吉能がリーダーになった。

──周りが盛りたてるタイプのリーダー?

山本 そのタイプですね。彼女がリーダーでいる限り、そんなにメンバーの仲が悪くなったりはしないと思うんです。一度二度大きな喧嘩があったというように聞いてはいるんですが、大体その中心が吉能なんですよ(笑)。それでうまく続くならいいかなという感じです。

──吉岡さんと青山さんが一度かなり激しくぶつかったそうですね。

山本 それを参考にして作ったのがTVシリーズの8話なんです。そういう流れにしようと思っていた時に、ちょうど吉能と茉祐が喧嘩したという話がありまして。すぐに脚本の待田さんと一緒に2人にヒアリングして、ストーリーに盛り込みました。だからアフレコの時に「やりやすいだろ?」って話したら、2人は苦笑いしてましたけどね。この作品はインタラクティブ性を大事にしていて、意識的に作っている部分もありますが、そういう偶然に支えられている部分もあります。

──監督が現実のメンバーに体験させたいと話していることは、作品の中のメンバーにも体験させていますね。

山本 そうなんですよ。現実と作品の重なる感じをすごくやりたかったんですが、唯一彼女たちの出だしの経験に関してはズレがありますね。本編中のWUGは駐車場の裏で、キャッチボールの少年たちに向けてライブをやってるんですね。そういう経験をしていないのは、ネックになるかもしれないと思っています。

──オーディションで最初に見た青山さんの印象と、合格の決め手を教えてください。

山本 吉能は僕より待田さんが推してて、僕は最初正直そんなに興味なかったんですよ(笑)。印象が変わったのは最終選考の時で、その時の選考では佳乃役と真夢役の志望者が40人ぐらい集まっていたんです。そこで僕が「この中で受かって残るのは2人だけだぜ。38人は落ちるわけだけど、落ちたらどうする?」って凄く嫌な質問をしたんですね。そうしたら泣き出す子もいたし、考えるのも嫌ですって子もいた。そんな中、吉能だけがすごく毅然と、「自分はこの道一筋で行くと決めているのでくじけたりしません」とキリっと言ったんですね。その時の彼女の口調が忘れられなくて、あ、これは佳乃だと思ったんです。しかもその時彼女熊本に帰らなきゃいけないので、途中で退出したんです。言いたいことぶわーっと言ってすっと帰ったのがすごく印象的で、みんなでこれは佳乃だね、と話し合って決めた覚えがあります。あの時の背筋をぴんと伸ばして言い切った姿が全てでした。普段はすごくお馬鹿なんですけどね(笑)。

──青山さんのその後の成長や変化と、今後の課題はなんだと思いますか?

山本 変わったのかな? たぶんなんですが、彼女自身、自分のへっぽこぶりを武器として捉えてるんじゃないかと思います。何度も喧嘩をする中でどうみんなをまとめていくかということで、自分の個性をプラスに使う意識も…あるのかもしれないし、ないかもしれない。でも現実として彼女をリーダーにしたWUGがなんとなくまとまっていることは事実としてあるんです。今後に関しては学業頑張ってくださいかな(笑)。しかし声優の道で頑張る限り、彼女は伸びると思いますよ。彼女のキャラクターも含めて、周りの人にかわいがられる人間なので。心配な点があるとすれば、メンタル部分が悪い方向に傾いた時に、あんなに根性がないやつはいないんですよ。なので今のバランスを保っていってほしいですね。

──七瀬佳乃は、かなり青山さんのキャラクター性に引っ張られた部分があるように思います。

山本 ええ、完全に引っ張られましたね。吉能が面白い面白いって待田さんとずっと言ってましたから。当初の佳乃は完璧主義者で堅くて、曲がったことが大嫌いでちょっとのミスも許せないような、I-1で言えば近藤麻衣に近いキャラクターだったんです。それがだいぶ変わりましたね。自分で何も決められないし、空回りするし、7話で藍里を引き戻す時も、泣いて感情で攻めるような。真夢はロジックで、佳乃は感情と想いで攻める。そういうキャラクター像になったのは吉能のおかげです。面白いキャラクター作りでした。

──新人の役者にとって、泣きと叫びの演技はかなり鬼門だと思うんですが、7話の佳乃は素晴らしかったです。

山本 いやー、どうかな(笑)。確かに素人っぽさはないけど、上っ面の芝居をしてしまうのも吉能と茉祐なんですよ。本人にもずっと、お前のテクニックはどうでもいいから想いを込めろって言ってるんです。吉能も合唱やったり芝居やったりの経験はあるし、アニメヲタクでもあるし、自分の中に完成形の演技のイメージがあると思うんです。でもそれを打ち破らないと本当の芝居はできない。

──もっとむき出しの自分を出してほしいということでしょうか。

山本 だから彼女に7話をつきつけてみたんです。最後はマジ泣きしながら、涙に任せて芝居をしていましたけど、本当はあの芝居を、本気で自分は泣かずにできるようにならないといけないんですね。あの時はマジで追い詰めて、泣きながらやらせました。泣きの演技ができないなら本当に泣いてやれってのが僕の演出プランなので。黒澤明監督が『隠し砦の三悪人』でだったかな、ヒロインの上原美佐がどうしても泣かないから、スタッフがボコボコに泣かせてそのシーンを撮ったって話があるんですが、僕はそのタイプですね。でも、全ての監督や音響監督がそうしてくれるわけではないので、想いを込めるとはどういうことなのかを学んでいってほしいですね。

山本寛監督から見た『Wake Up, Girls!』
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