2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。
キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、作品と彼女たちの魅力に迫って行く。
全七回の第五回に登場するのは徳島出身、ふわっとした透明な雰囲気で、笑いのテンポが周りと違うとメンバーに評判の山下七海だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。
──『Wake Up, Girls!』に出会うまではどんな女の子でしたか?
山下七海 高校生だったんですが、わりとなんでも自由にやっていました。バンドをやっていて、勉強よりも好きなことばっかりしていました(笑)。マイペースな性格でした。あとは英語も好きでよく勉強しました。
──バンドではどんな活動をしていたんですか?
山下 『けいおん!』の楽曲をよく演奏していました。曲は「Don't say“lazy”」はずっと歌ってましたね。バンドのリーダーの子が『けいおん!』が大好きだったんです。地元の小さいライブハウスでライブをやったり、あとは学校の文化祭でライブやったり。私はボーカルで、エレキギターもちょっとやってました。
──部活でフルートもやっていたんですよね。
山下 そうなんです。中学校の時は吹奏楽部でした。フルートをやりたいとずっと決めていたんですけど、希望者が15人ぐらいいたんです。実際にフルートで取ってくれるのは2、3人だけなので、必死に練習してオーディションで勝ち取りました!
──山本監督によると、AAAに憧れていたとか。エイベックスのオーディションを受けたのはそれも理由だったんですか?
山下 そうなんです! 歌って踊るのがすごいなと思っていました。AAAがエイベックスに所属していたので、公式サイトをよくチェックしていたんです。そこで第二回アニソン・ヴォーカルオーディションがあることを知りました。
──オーディションで印象に残っていることを教えて下さい。
山下 一時の書類審査用の写真がなくて、夜中に開いている写真屋さんを探して駆け込んだのを覚えてます。好きなアニメとか、アニメに関する質問項目が結構あったので、「特にありません」をたくさん書いてしまったのが申し訳ないというか、今でも悔やんでます。あの時はまだまだ甘い考えで、深く考えてなかったなぁと思います。
──その後の面接審査はどうでしたか?
山下 二次は大阪で受験したんですが、そこで友達ができたんです。大阪のオーディション会場ってあんまりピリピリしていなくて、会話が飛び交ってるような空気なんです。飴を配ってる人もいたりして。その時に話しかけてくれた子とは今でも友達なんです。
──最近は声優アーティスト的活動をする声優さんも増えていますが、アーティスト活動にも興味がありますか?
山下 元々声優さんになりたいというよりは、歌って踊る活動をやりたい気持ちが強かったんです。でもこのオーディションをきっかけに声優さんのお仕事をやるようになって、考え方もどんどん変わって、声優アーティストとして両立して活動していきたい気持ちが大きいです。
──意識の変化というか、演技の面白さや難しさを感じたきっかけはありますか?
山下 最初は、私はみんなと比べてアニメのことを全然知らなかったので、不安で苦しかったです。声優レッスンも全然楽しくなくて、どうしようって思ってました。でも去年の夏ぐらいに久海菜々美ちゃんの設定とイラストをやりたいもらったんですて、自分の中で意識が変わりました。それまでは『Wake Up, Girls!』の活動や詳しいことはあまり私たちには知らされてなくて、ふわふわーっとしてたんです。
──なんのために今のレッスンをやってるかがイメージしにくかった?
山下 そうなんですそうなんです! お披露目の時期とかもわからなかったのでふわふわしてたんですけど、キャラクターのデザインを初めて見せて頂いた時に、この子を演じるんだ、演じたいというように気持ちが変わりました。そのために足りないものをどんどん吸収しないとと思うようになって、積極的にレッスンに参加するようになったら、声優レッスンもすごく楽しくなってきたんです。
──最初はつらかったとのことですが、そういう時にメンバー同士で相談したりはしますか?
山下 するメンバーとしないメンバーがいますね。美海とか意外と自分のことは話さないんですよ。よくみんなに相談事をしてるのはまゆしぃだと思いますね。あとは夏夜香耶も上京してきたばかりなので、一人暮らし大変ー、みたいなこととか、お仕事の相談とかよくされます。
──山下さんは一人暮らしで料理とかは自分でするんですか?
山下 しますします。私料理は得意で、仕事帰りにスーパーに寄って、晩御飯を作るのが日課です。公式ではレタスチャーハンって書いてるんですけど、いつもそうなわけじゃなくて。冷蔵庫で油揚げとかニンジンとか、残ったものでチャーハンを作ることが多いんです。便利ですチャーハン。いつもご飯を包んで冷凍してあって、それふたつ分で作ります。
──山本監督が、光塚を目指していたけどWUGで活動している菜々美と、ボーカリスト的なものを目指していた山下さんが重なるんじゃないかと話していました。
山下 ああ、はい(笑)。実はそうだなって私もずーっと前から思ってたんです! メンバーは声優になりたいって思っていた子が多い中、ちょっと違う路線というか、目的があって。そういう一面も菜々美ちゃんとおんなじで、こんなに一緒なんだ! と自分でもびっくりしました。そこは菜々美ちゃんに似ているかなと思うところです。
──監督は山下さんの最初の印象は、芋だった、田舎の子だったとしきりに仰るんですが、どう思いますか?
山下 何度も言われました(笑)。でもそれは否めないというか…(笑)。私徳島って田舎からひょいひょい出てきた女の子だったので…悔しいけれど、それは認めます!
──でもすごく垢ぬけてかわいくなったとも仰ってました。撮影でも覚醒してどんどん新しい表情が見えるようになったとか。
山下 えー、そんなこと言ってたんですか? 自分ではそんなにこうしよう、とかは意識してないんですよね。でも元々私すごく緊張しいなので、撮影とかでだんだん緊張しなくなったのが大きいかもしれません。
──メンバーにはいつも「七海はトークや笑いのテンポが違う」と言われてますね。
山下 自覚はあります(笑)。なんででしょうね、自分ではよくわからないんですけど。でもテンポが違うのは感じていて、やっぱりマイペースなんだと思います。たとえばよっぴーがダジャレとか親父ギャグを言って、メンバーがはいはいって流してる時に私だけ笑っていたり。逆にメンバーが笑っているときはそのギャグの内容を頭のなかで考えていて、話が終わってから笑い出したりするんです。
──でもイベントや、最近始まったラジオなどでは、自分のペースを保ちながらも相手や周りに合わせないといけない場面も増えますよね。
山下 いやーもう必死です! 迷惑かけないように頑張ろうとすると、変なこと言っちゃったりするんです。この前も「@JAM(アットジャム)」のことを「ドットジャム」って言っちゃったり。自分がすごくマイペースなのがわかっているので、迷惑かけちゃいけない! と思うのがすごく緊張しやすい理由なのかもしれません。
──今まで監督に言われて印象に残っていることとかはありますか?
山下 髪型のこととか…(笑)。『Wake Up, Girls!』のアフレコの時はわりと髪型を変えていったんですが、今日の髪型いいね、黒髪ロングだね、とか髪型を褒めてくれることが多くて、大体第一声がそれです。
──あまり厳しく演技を指導をされたりはない?
山下 ぜんっぜんなかったんです。ほんっとに、なかったですね。まゆしぃとかは重要な役割なので、音響ブースの方に呼び出しがかかったりするんです。愛理やよっぴーもそういうのがあったんですけど、私は全然ないんですよね。菜々美はそんなに台詞量も多くないので、わりとあっさり終わってしまうんですよ。
──指導がないのも、ちょっとさびしい部分もある?
山下 自分的にそれはちょっとあって、悲しかったです。よっぴーとまゆしぃがもう、泣きながらすごい演技をしていたりするのを側で見ていたりするので。そういうのが全然ないのも他のメンバーと違うところかもしれません。あ、美海もあんまり監督に指導されたりはなかったかもしれません。
──菜々美ちゃんは優等生的というか、とても賢くて自分で解決できてしまうのは少し損な気もします。
山下 そうなんですよね。監督にも待田さんにも、菜々美ちゃんは損なキャラクターだとはよく言われます(笑)。でもそのことに関しては悲しくはないんです。菜々美ちゃんってなんでも自分で決めて進んでいく女の子じゃないですか。私自身がそういう子にすごく憧れがあるし、実は私の身近にいたお母さんに似てたんです。お母さんが看護師さんですごく強いんです。そういう強い女性に憧れがあったので、菜々美ちゃんに親近感があったし、私は損だとは思ってないです。
──英語を勉強していたという話がありましたが、先日はWUGと監督でシカゴの「アニメセントラルに招かれました。「Call me“NANAMIN”!!」とノリノリだったとか。
山下 ありましたありました(笑)。英語で難しいことはペラペラ言えないなと思っていたので、その場で短いやりとりでできることがそれだったんです。
──サイン会でも生き生きしていて、現地の人とも英語でコミュニケーションしていたそうですね。
山下 元々高校で、英語を重点的に勉強する特殊なクラスにいたんです。学校の行事で外国の方が学校に来ることがよくあったり。一緒にキャンプに行ったりホームステイしたりがカリキュラムに入っていたので、外国の方とお話する機会は今までもあったんですね。だからそういう意味ではあまり物怖じせずに行けたと思います。勉強していたことが役立ってよかったです。でも海外のワグナーさん、日本語がお上手なんです! だから最初に「Can you speak Japanese?」って聞くと、「スコシ…」とか答えてくれるんです。「『Wake Up, Girls!』大好き」「応援してます」と日本語で言ってくださる方が多くて嬉しかったです。あとは地元の方が、オススメなスポットやシカゴピザについて英語で教えてくれたりしました。
──シカゴピザが結構すごかったんですよね。
山下 すごかったです! もう次の日胃もたれがすごくてやばかったです。日本に帰ってからしばらくゼリーとサラダしか食べられませんでした。私人生初の胃もたれだったのでキツくて、びっくりしました。メンバーは、美海って案外量は食べないんですよ。実波は大食いキャラなんですけど、美海本人はあんまり食べないです。でもホットケーキとか甘い系はよく食べてます。なんでも食べるのは美佑です、シカゴでも強かったです。勝てないです。
──海外でのライブはどうでした?
山下 日本のワグナーさんがサイリウムを配ってくださったんですけど、あんまり海外の方はサイリウムには慣れてないのかなと思いました。日本から来たワグナーさんの周り以外は、こう拳を上げて応援してくださるノリの方が多かったですね。海外は大好きなので、また来年「Anime Central」に呼んでほしいです! でも結構遠くて、行きの飛行機は左右がメンバーだったんでよかったんですけど、帰りは知らない方で小さくなってました。あと、テーブルをしまってたら機内食いらないと思われちゃったらしくて、すごくおなかがすきました…(笑)。
──かなりライブステージを重ねてきましたが、本番や練習を通して変化を感じたりはしますか?
山下 変わってきたなと思うのは、新しい振り付けを入れる時に、みんな覚えるのがすごく早くなってるんです! 一度私握手会があって、新しい振りのレッスンに遅れて行ったんです。そしたらもうみんなかなり踊れるようになっていて、その早さにびっくりしつつ、いない間にみんなが進んでいてかなり焦りました(笑)。でも自分もそこからなんとか時間内に全部振りを入れられたので、成長してるのかなとは思います。
──これから山下さんがこんな役者、アーティストになっていきたいというイメージはありますか?
山下 私自身すごく緊張しぃで、大きなイベントとかが控えてたりするとなかなか夜も眠れないんです。メンタルが弱いんです! 自分自身がそうなので、私自身の声で誰かの緊張を和らげたり、肩の力を抜いてもらえるような、そんな声で演技をしていきたいと思います。
──監督は役者と歌とのバランスで、根っこが声優であることを忘れなければ七海は大丈夫! と仰ってました。
山下 本当ですか? 監督ほんとにそういうことは言ってくれないんですよ。シカゴでもまゆしぃにはお仕事のアドバイスとかしてたんですけど、他のメンバーは結構メンバー同士で盛り上がっていたのでそういう機会もなくて。最初は監督も私たちとの接し方も探り探りだったと思うんですけど、最近距離も縮まってきたので、私にもアドバイスとかほしいなと思います。これからに期待です(笑)。私たちも以前ほど監督に対してガッチガチに緊張したりしないので、シカゴでもまずはシカゴを満喫しようって感じでした。あ、でも愛理と監督と一緒に色々回っている時に、「山本監督お父さんみたいだね」って話したら、「父親の気持ちだよ」って言ってポップコーン買ってくれました。
──では最後に、この夏はどんな夏にしたいですか?
山下 今年の夏はメンバーもすごく忙しいので、『Wake Up, Girls!』と他のお仕事をうまく両立させながらこの夏を大成功させたいです。だからみんなで話し合ってもっと結束を深めて、夏の終わりに大成功だったね、良かったねって言えるようにできたらなって思います!