Wake Up,Girls!

山本寛監督 vs「Wake Up, Girls!」 特別インタビュー企画

05 久海菜々美役「山下七海」編

 2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。

 キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、作品と彼女たちの魅力に迫って行く。

 全七回の第五回に登場するのは徳島出身、ふわっとした透明な雰囲気で、笑いのテンポが周りと違うとメンバーに評判の山下七海だ(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。

山本寛監督に聞く『Wake Up, Girls!』「山下七海」編 久海菜々美役「山下七海」編個別インタビュー

山本寛監督から見た 『Wake Up, Girls!』

──菜々美を中学生で、アイドルと光塚の間の進路で悩む立場に設定したのは狙いがあったんですか?

山本 狙いというよりは、WUGに関しては典型的な七つのパターンを用意していったんです。それでツンデレがいないな、となったので菜々美をツンデレに設定して、年齢や身長のバランスを決めていきました。ツンデレにするためにお高くとまるにはどうすればいいかを考えて、光塚歌劇団という本人にとってはより高い目標を持たせて、あくまでもアイドルは鍛錬の場にすぎないんだよ、という設定にしました。

──監督がアニメの道に進もうと定めたのはいつ頃ですか?

山本 完全に決めたのは中三の時ですね。受験を前にした中三の夏で、アニメを作るために人生設計をしようと思いました。中一の時に見た『天空の城ラピュタ』に大きなショックを受けて、かなり研究しました。大量に作品を見て本を読み、宮崎アニメから入ったので「月刊アニメージュ」(徳間書店)を穴があくまで読んでいました。大学時代は「アニメージュ」に傍線を引いてサークル仲間にビックリされていましたからね。勉強として読んでいたんです。

──アニメ監督になるのに京都大学に進むのは、“普通”ではないですよね。

山本 それも宮崎駿さんの影響です。宮崎さんが「アニメの演出家を目指すなら芸大や専門学校には入るな! 普通の四大に行け!」と書いていて、大学で経験値を積んだほうが絶対にいいと書いていたのを真に受けたんです(笑)。それが正しいかはわかりませんよ? 僕も最後まで京都大学と、日大芸術学部と大阪芸大、このみっつで迷いました。結局最後は宮崎さんの教えを信じて、そしてどうせ四年制大学に行くならちゃんと勉強しなくちゃと思って京都大学を選びました。

──選択肢に大阪芸大があるのは、大阪芸大が庵野秀明さんらガイナックスの中核メンバーを輩出した影響ですか?

山本 それは間違いなくあります。やっぱり憧れがありましたので。だから模試の志望欄には最後までその三校を書いていました。

──前回お伺いした自主制作映画の『怨念戦隊ルサンチマン』は、庵野さんたちが大学時代に作った『愛國戰隊大日本』へのオマージュですよね。

山本 めちゃめちゃ影響を受けてるでしょうね(笑)。 庵野さんは自分たちのことをコピー世代と言っていますが、だったら僕たちはコピーのコピー世代なので、どんどん薄くなってますね。でもそれでいいじゃんと開き直っている部分はあります。

──山本監督はコピーをアレンジして…というよりは我が道を行くイメージです。

山本 うーん、僕は「俺の言うことを聞けー!」タイプですね(笑)。各話演出の頃も監督と大喧嘩したり、プロデューサーと大喧嘩したりばかりしていました。若い頃からずっとですね。普通はないことだし、今はますます無くなりましたけどね。監督のリテイクに噛みついて、元の自分のテイクに戻させたこともあります。でも僕は言う分納得させられるだけの仕事をしたつもりなので、崖っぷち感、必死感はあったと思います。

──そして『怨念戦隊ルサンチマン』でコムーロ大帝役を演じていたのが、監督とは高校時代からの友人である神前暁さんでした。同じ学校、同世代の仲間がその後プロとして一緒に作品を作るのは大阪芸大ガイナ世代っぽいですよね。

山本 神前はローリー神前という名前で出て(笑)、劇伴もやってくれていました。あとは一緒に京都アニメーションに入った村元克彦氏なんかも参加してました。ガイナ世代に近い感じはあるのかもしれませんが、やっぱり(庵野氏らが学生時代に制作に関わった)DAICON FILMのような規模感にはできませんでした。本当はもっと多くの人間をアニメ業界に連れ込みたいなと企んでたんですけど、そこはやっぱり京大なんですよ。アニメをやるために京大に入ったなんて言うのは自分ぐらいだったんです。今は京大からアニメが好きで業界に入る人間もだんだん出てきましたけど、つきあいのある当時の仲間は公務員ばかりですね。やっぱりそれが賢いです。

──『Wake Up, Girls!』では「タチアガレ!」作曲や企画段階からの音楽プロデュースを手がけている神前さんですが、学生時代はどんな人でした?

山本 変なやつでしたね。あいつは僕と違って本当に真面目なんですよ。女遊びも全然できなくて、大学の工学部でプログラミングの基礎も学んでいました。彼は当時から音楽をやることを決めていて、俺はアニメの監督をやるから音楽で一緒にやれたらいいねと話していて、『涼宮ハルヒの憂鬱』で本当にその通りになったんです。自分がガイナックスを好きになったのも神前の影響で、たしか高校時代に彼に紹介されて『トップをねらえ!』を見たんだったと思います。真面目でストイックな男で、独学で音楽を作り続けていました。高校時代に彼が作った最初の曲はそりゃもうひどかったんですが(笑)、大学時代に音楽サークルに入っていろんな人の影響を受けて、ライブを経験して楽器もさわって見聞を広めて、どんどんいい音楽を作るようになりました。

──神前さんの音楽をどう見ていますか?

山本 神前は上手いだけでなく、適応能力があるんです。こちらの要望に合わせてくれるので非常にやりやすいんです。その分作家性は薄いかもしれないというか、彼に発注するときに「好きなようにやってくれ」と言うと怒るんですよ(笑)。その代わり参考になる曲やイメージを幾つか出すと、必ず提示したものを超えたものを作ってくるんです。絶妙なアレンジをしてくるんですね。もう今は神前は作家先生なのと、『Wake Up, Girls!』は音楽プロデュースを任せたこともあるので、今はあまり口出ししません。あ、でも「タチアガレ!」のテンポを変えてもらって、いつものように喧嘩になりましたね(笑)。他の作曲家にはそこまで言わないんですが、彼は文句を言いながらもやってくれるのでありがたいですね。その分レコーディングには一切口を出さないようにしました。

──監督から見て、『Wake Up, Girls!』のサウンドを手がけるMONACAというチームはどんな存在ですか?

山本 いいチームですね。岡部(啓一)さんの教えなのかはわかりませんが、チームとしてのまとまりがすごくいいんですよ。いろいろな曲を作れるんだけど、作風はまとまっている。普通作風がバラけるものなんですが、合わせてくるんですよ。お互いがお互いを埋め合わせている。MONACAに任せれば音楽面はなんとかなるんです。贅沢を言うと、MONACAにやってもらう仕事はオーダーに完璧すぎるかもしれない。神前はそこにプラスアルファのアレンジを入れてくるのが絶妙なんですよね。ともあれ、本当に素晴らしい才能が集まったいいサウンドチームです。田中秀和さんも、神前が神戸に新人を捕まえに行くんだーって話しているのを聞いていたんですが、本当にすごい収穫でしたね。層が厚いです。

山本寛監督から見た『山下七海』
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