Wake Up,Girls!

山本寛監督 vs「Wake Up, Girls!」 特別インタビュー企画

04 岡本未夕役「高木美佑」編

2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。

キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、作品と彼女たちの魅力に迫って行く。

全七回の第四回に登場するのはWUG最年少でありメンバー随一のオタク、高校三年生として学業とWUGの活動の両立を頑張る高木美佑だ。(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。

山本寛監督に聞く『Wake Up, Girls!』「高木美佑」編 岡本未夕役「高木美佑」編個別インタビュー

山本寛監督から見た 『Wake Up, Girls!』

──今回は未夕と高木さんがテーマなので、オタク周りの話を聞いていきたいと思います。かなり脱線になるんですが、山本監督は大学時代、自主制作映画の『怨念戦隊ルサンチマン』で、オタクから見た一般人、リア充的価値観へのコンプレックスや鬱屈を描いていますね。

山本 僕らの世代は最大のオタク受難の世代だと思うんです。宮崎勤事件がその最たる契機で、そこからオタクって気持ち悪いとか、犯罪予備軍みたいに呼ばれ続けた時代で、本当に鬱屈したものを抱えていました。僕らにとってはオタクがどうやったらモテるかが大命題で、議論を重ねていました。新歓のビラを近所の女子大に配りに行ったりして、結果一人も入らないんですけどね(笑)。本当に無駄な抵抗をしていました。オタクが一般人との見えない壁をどうやったら超えられるかが無理難題でした。

──『怨念戦隊ルサンチマン』では敵方としてパンピー帝国のコムーロ大帝やアムラー参謀が登場したわけですが、それが今や山本監督がエイベックスと組んでアニメを作っているのは抜群に面白いです。

山本 きっと秋元康さんがそのボーダーを打ち砕いちゃったんだと思います。AKB48がぞわーっと出てきたことで、アキバ系と一般層が形の上ではボーダーレス化してしまった。その結果今僕がエイベックスさんと組んでいる(笑)。そういう意味では今のオタクってうらやましいなって思います。この前大学のサークルで現役の連中と話したんですが、今の連中はみんなサークルの外に彼女がいますね。オタク色が薄まったし、周りの空気を読むようになった。

──オタクの世代の変化を感じるわけですね。

山本 昔はもっと孤高で超然としてて、壁を作っていましたね。文句あっか! という虚勢はコンプレックスの裏返しで開き直りなんですよ。だからこそオタク知識を深めて、議論を重ねて、美学的にアニメを考察していた。当時はアニメというものがいかに正義かを理論武装して戦っていたんですよ。

──そういう鬱屈って創作の源泉みたいなところがある気がします。

山本 僕にとってはそこが原点なので、なんでそんなに一生懸命なんだろうってよく言われますよ。(プロインタビュアーの)吉田豪さんにも「そんなに一生懸命で疲れませんか」って言われたりね(笑)。知るか!ほっとけ馬鹿野郎!ってね。

──そんなオールドタイプオタクの山本監督ですが、『Wake Up, Girls!』ではオタクをリアルに、しかしかっこいい存在として描いています。

山本 オタクの典型を描いているので、たまに「あんなデブオタに描くなんて、ヤマカンはオタクを馬鹿にしてる」って言われることはありますよ。でもオタクという存在をあまり現実と離れたファンタジーにはしたくなかったんです。「俺もオタクだし、みんなオタクだよな。でもオタクってこうあるべきだよな!」…そんな気持ちを込めたのが大田邦良 というキャラクターなんです。大田のビジュアルをイケメンにしようという案もあったんですが、それではやっぱり特別感が漂いすぎて共感が得られない。だから本当に等身大のオタクで、誰もが一歩踏み出せば届く距離にいる存在にしたかったんです。

──ツイッターなどでは、ひょっとしたら大田さんの画像が一番人気かもしれません。

山本 そうですね、それはいろんな要因があると思うんです。なんでそんなにオタクの作画に気合いを入れてるんだ!その分WUGに力を入れろ!という声は当然あります。でも気合が入っちゃうんですよ!(笑) みんな乗って描いてましたよ。最終話、大田たちがわーっと盛り上がっている場面は、作画監督が一人で全部直してるんですよ。「俺が大田をなんとかするんだ!」と気合を入れて、すごいしわまで描き込んでね。全篇で言うといろんなアニメーターで分担して作画してますが、やはり自分たちの思いを乗せたキャラクターなんだと思います。

──ファンをどう描くかって、アイドル作品の思想がかなり出る部分ですよね。

山本 『Wake Up, Girls!』はアイドルアニメ史上例がないほどオタクが出てくる作品だと思います。そこははっきり主張しようと思って作っていて、アイドルって、ファンでありオタクがいてこその存在だと思うんです。その存在を否定することはありえない。アニメファンは男なんて見たくない、オタクなんて見たくないと思う人もいると思うんですが、そこはアイドルアニメとして忌避してはいけない部分だと僕は思っています。同時に自己否定というか、鏡に映る自分を見たくないというのはそろそろやめようよ、という思いも自分の中にありました。皆さんももっと自信を持ってWUGを推そうと思ってほしい。それは賭けではありましたが、概ね成功してるんじゃないかと思います。

──4月の品川ステラボールイベントで、現実のワグナーさんたちとアニメのオタク役の声優さんがクロスオーバーしました。

山本 あれはすごく面白かった。下野紘以外の4人が来てくれたんだけど、下野が来たらどうなっていたのかな(笑)。下野も直前まで来る予定だったんですよね。あれはしびれたな。出演者と会場のファンがお互いに「あ、ワグナーだ」って認める瞬間。どっちがワグナーだ、どっちもワグナーだ、みたいな感じを醸しだせたのはこの作品ならではだと思います。萌え系の作品って、箱庭を外部からニヤニヤ眺めている感じがあるじゃないですか。それもいいけど、やっぱりアイドル物は握手会で触れ合ったり、コールとレスであったり、ファンとアイドルのコミュニケーションがあってこそ発展するものだと思うんです。中に入っておいでよってことを呼びかけたのがこの作品で、これは「外から見ていたい」アニメファンと「入っていきたい」アイドルファンの違いだと思います。

山本寛監督から見た『田中美海』
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