Wake Up,Girls!

山本寛監督 vs「Wake Up, Girls!」 特別インタビュー企画

06 菊間夏夜役「奥野香耶」編

 2014年3月にTVアニメ放送を無事終え、この夏にはツアーや「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」出演など、さらなる飛躍を期待される『Wake Up, Girls!』。

 キャラクターたちを演じ、ステージに立つ7人は、一体どんな少女たちなのか。『Wake Up, Girls!』監督であり、7人を見出した山本寛監督にインタビューを行ない、その内容を踏まえた個別インタビューをメンバーそれぞれに行なうことで、作品と彼女たちの魅力に迫って行く。

 全七回の第六回は、WUG最年長の演技派で、メンバーの相談に乗ったりもするお姉さん、
普段はにこにこしながら一歩引いているイメージがある奥野香耶に話を聞いた。(聞き手・構成・撮影:中里キリ)。

山本寛監督に聞く『Wake Up, Girls!』「奥野香耶」編 菊間夏夜役「奥野香耶」個別インタビュー

菊間夏夜役「奥野香耶」個別インタビュー

──『Wake Up, Girls!』に出会うまではどんな女の子でしたか?

奥野香耶 深夜アニメではない普通のアニメはよく見ていて、キャラクターに声をあてる演技って楽しそうだなとは思っていたんですが、自分とは遠く感じていたんです。でも高校の時にオタクの友達から、香耶ってある声優さんに声が似てるねって言われたんです。えっそうなんだと思って、その人の作品の声を聞いて、自分でもキャラクターを真似てやってみたらそれっぽい声が出たんです。自分にもこういう声が出せるんだって思ったのが新しい発見でした。それからアニメのキャラクターの声真似をするのが趣味になって、登場する全部のキャラクターを自分で演じるような遊びを、誰にも言わずにこっそりやっていたんです。そうする内にどんどん声優の仕事に興味を持つようになりました。

──アニメの声真似が趣味なことや、声優になりたいことはずっと秘密だったんですか?

奥野 高校を卒業する時に、親に声優の専門学校に行きたいって打ち明けたんです。でも親は私が声を真似たり演じたりが好きなことは知らなかったし、家ではあまり話さない子だったので、「え、香耶が? できるわけないから現実を見なさい」みたいな反応でした。自分ではできるのに…と思っていたんですけど、「自分だってできるもん!」と言葉にする勇気はなくて。それで結局通っていた学校の姉妹校の大学に行きました。その大学自体にはすごく興味があったので、結果的にやりたかった勉強と声優の道と両方できることになったので、良かったです。

──大学に入っても声優になりたい夢は消えなかったんですね。

奥野 同じ年ぐらいの子たちが声優の雑誌に載っていたりするのを見て、いいなぁ…という気持ちはずっとありました。幾つかオーディションを受けていたんですけど、それは駄目で。そのうち四年になり、就活が始まり、色々うまくいかないな、もう駄目だ…となっていた時に、第ニ回アニソン・ヴォーカルオーディション(avex×81produse Wake Up, Girls! AUDITION)があることを知ったんです。これはきっと、最後のチャンスだから受けるしか無いと思いました。これに落ちたら諦めて、親の言うように現実を見ようと思いました。当時の私は、親にフィギュアとか全部捨てなさいと言われるぐらい現実逃避をしていたんです。でも、このオーディションに受かってからは親もすっかり協力的になって、「(奥野さんが好きな)エヴァのフィギュアの新作がどこどこから出るよ」なんて教えてくれたりして(笑)。WUGのオーディションをきっかけに全部が変わりました。

──『新世紀エヴァンゲリオン』のTVシリーズとは少し世代が違う気がしますが、好きになったきっかけはありますか?

奥野 私が小学生の頃、兄がよくアニメを見ていたんです。その頃兄が反抗期で怖かったので、後ろからこっそりなんだろうな、とちらちらと覗いてました。それで興味を持っていて、高校になった頃に家族が仕事で、兄も部活で忙しくなっていたので、誰もいない時にこっそり見たら何これ面白いってなって、そこからどんどんハマっていきました。大学生になった頃はDVDも漫画も全部揃えてました。

──山本監督と『エヴァ』の話とかしたりしますか?

奥野 ありますあります。監督が大学の卒業論文のテーマが『エヴァンゲリオン』だったらしいんです。それで私も大学の卒論のテーマはエヴァにしようと思っていたので、監督はどんなことを書いたんですかって聞きました。『新劇場版:Q』どうでしたって話したり。でも、監督はすごく難しい言葉で返してくるので、よくわからないんです。もうちょっと楽しくお話したいなって思いました(笑)。

──そんなエヴァ好きの奥野さんがラストチャンスとして挑んだWUGのオーディション、未夕役で受けたんですよね。

奥野 そうだったんです。自分で希望したわけではなくて、未夕で受けてみてと言われました。二次審査の時に七人分の台詞があって、好きな台詞を選べたんです。私はツンデレがやりたかったので、今で言う菜々美の台詞を読みました。でも山本監督にこれ読んでくださいって言われたのが夏夜の台詞でした。でも、最終審査ではなぜか未夕に振り分けられていて。未夕を選ぶオーディションの最終6人までは残ってたんですが、そこで菊間やってみてって言われて、やってみたらすぐにそちらに移動になって。そのまま夏夜役で合格しました。

──色々変遷があっての夏夜役はすぐにしっくり来ましたか?

奥野 オーディションの時は、わりと不良っぽい声を意識してたんです。それで役が取れたと思っていたんですが、演技が始まってからはだんだん大人っぽく、低めのお姉さんにと言われることが多かったので、セクシー系のお姉さんか、私大丈夫かなって思いながら演じてました。演じながらだんだん馴染んでいった感じですね。

──監督が唯一自分とは違うキャラクター、性質を演じているのが奥野さんだと言っていました。なので奥野さんから一番見えやすいんじゃないかと思うんですが、リアルのメンバーがアニメのWUGをなぞったり、寄っていく部分はあると思いますか?

奥野 あると思います。いつの間にか似てきてるんだと思います。たぶんみんな意識はしてないと思うんです。それは私たちが寄っていくだけじゃなくて、演じる側の私たちが言った言葉が、いつの間にかアニメ本編の台詞に入っていたりするんです。あれ、これこの前言ったよね? みたいな。不思議な感じですね。

──監督は「菊間夏夜」と「奥野香耶」の一番の違いとして、奥野さんはメンタルが弱いんだと話していました。

奥野 はい…すいません…。メンタルは弱いですね。何か言われたらそのことで頭の中がいっぱいになってしまって、他のことが手につかなくなってしまいます。でも、でも言われたことに対してショックだというより、みんなの前で言われたことにショックを受けている感じで、気にするべきところが違うって自分でも思うんですけど。変なところで気にするタイプで、すごくショックを受けて切り替えもできなくて、一回ぐさって刺されたらそのままもう駄目だ…ってなっちゃうタイプです。褒められないと、生きられません。

──奥野さんは、山本監督にぐさっはあまりやられないですか?

奥野 アフレコ中の演技についてとかは、あまり厳しく言われたことはないです。ライブではよく「声が小さい!」って言われますね。

──そういう自分を変えたいとは思いますか?

奥野 もちろんメンタルが強い方はいいとは思います。変えたいというよりは、変えられたらいいなーって感じです。たぶんこれは努力して変えられるものじゃないと思うので、これから先いろいろな失敗や経験をする中で、変わっていったらいいなと思っています。

──今まで監督に言われて、印象的だったことはありますか?

奥野 演技のこととかはあまり言われないんです。第九話の夏夜の過去の話をやる前に、もう一度菊間夏夜のこれまでの道のりを丁寧に説明してくれたぐらいですね。でもいつも、なんでそんな泣きそうな顔してるのって言われます。

──何かやりたいんだけどすべきことがない、やるべき場所がない、みたいな夏夜が持ってるもやもやの部分は、奥野さんと通じる部分があるのでは、という話もありました。

奥野 私はWUGになる前がそうで、結構菊間夏夜ちゃんと似ているところがありました。やりたい仕事もないし、どうやって生きていこう…って感じでずっと悩んでいました。私大学をちょっと休学して、家にずーっといた時期があったんです。ご飯も食べられないぐらいで。でも、声優の夢があきらめられなくて、WUGのオーディションだけはあきらめなくて、受験した感じだったので。菊間夏夜にとってのアイドルが、私にとっての声優の道だったんです。道のりがすごく似ているなとは思いました。

──監督から聞いて、よくわからなかったのでご本人に聞きたいんですが、奥野さんが「壁と結婚したい」というのは…?

奥野 そうなんです! やっぱり何も言わないし、きれいだし、いつでも寄りかかっていいし…ガンガンってやってもどうぞって感じで受け止めてくれるじゃないですか。何も喋らないのに、ずっと側にいてくれるところが最高だと思います。素敵! 壁最高です。

──実はスプラッタ的な、ちょっとグロい系もお好きなんですよね。

奥野 好きですね。でもお化けとかは駄目なんです。怖いのは駄目で、血がブシャーとかは平気なんですけど、幽霊に足を掴まれて引きずりこまれたりは駄目なんです。ゾンビとかはあまり見ないけどたぶん大丈夫かな。お化けとか幽霊とか存在しないものが怖いです。

──青山さんも部屋に誰かがいないとお風呂には入れないとか言ってましたね。

奥野 だからよっぴーと相部屋の時にお風呂一緒に入ろうとか言われましたけど、そこははいはい部屋にはいるからって言って断りました(笑)。

──伺っていると奥野さん結構不思議で個性的な一面もあるんですが、そういう面ってあまり『Wake Up, Girls!』では出さないですね。

奥野 出す場所が無いですね? だからまだファンの方にはバレていないと思います(笑)。私個人は全然出してもいいと思ってるんですけど…出す機会がないので。でもファンの方はどっちがいいんでしょうね、今のままの私のイメージがいいのか、ちょっと毒を吐いたりもする私もいいのか。隠してるわけじゃないので、そのあたりも模索していきたいと思います(笑)。

──監督が、奥野さんは前に出たい気持ちと、前に出たい気持ち、矛盾する感情が両方あるのでは、と仰っていました。

奥野 ありますね…やっぱりどんどん前に出たほうが、私のファンの人は喜んでくれると思いますし、私ってあまり話さないと思われがちなんですけど、普段はよく喋りますし。でもステージ上ではなかなかそれができなくて、「これ言っていいのかな?」とか考え込んでいる間にコーナーが進んでしまったりが、よくあります。だから色々出したい気持ちはあるんです。私会話に割り込むのが苦手なので、誰かに振ってもらわないとなかなか入れないんです。

──最近、吉岡さんとか意識して奥野さんにトークを振ろうとしている感じも受けます。

奥野 最近みんな気を使ってくれて、香耶に喋らせようって言ってくれるようになりました。よっぴーが台本見て香耶が話すところ少ない! ここ言って! って言ってくれたり。みんな優しいです。

──最後にこの夏はどんな夏にしたいですか?

奥野 アニメは終わりましたが、アニサマとかあるじゃないですか。実は去年のアニサマがあった日、「タチアガレ!」のレコーディングをしていたんです。その私たちが一年越しにさいたまスーパーアリーナでステージを披露できることがすごく嬉しくて、きっとこうやってWUGはひとつひとつ夢を叶えていって、どんどん大きくなっていくと思うので、それが現実になるように自分にできることをひとつひとつやっていきたいと思います。

【7月18日更新予定:最終回 島田真夢役[吉岡茉祐]編に続く】
ページトップに戻る